誠信会創立60周年御礼の言葉
創立60周年を迎え大変嬉しく存じます。
これまで多くの皆様にご縁をいただき誠にありがとうございます。
誠信会は、創立者長谷川明徳が曹洞宗僧侶として九州熊本の大慈寺で修行をしたおり、大慈寺開祖寒巌義尹禅師(かんがんぎいんぜんじ)が有明海開拓事業などの社会事業に尽くした禅の宗風に憧れを抱いたことにはじまります。
それから、社会事業家を目指し仙台社会福祉短期大学(現在の東北福祉大学)に学びを求めました。
その修学中、昭和33年狩野川台風が発生し伊豆半島に大きな被害をもたらします。
折しも大学から帰省中だった創立者は、あまりの被害の大きさと被災者の多さに驚いたそうです。
そして、災害孤児を自らのお寺(玉泉寺)にひきとることを決め、昭和37年に認可されたのが、児童養護施設誠信少年少女の家となります。
また、創立者の足跡として語り継がれるのが、昭和34年に最新の児童福祉を学ぶべくアメリカ合衆国ネブラスカ州オマハにあるフラナガン神父が開いたボーイズタウンへの一ケ年の見聞修行です。
当時は交通手段もままならず、横浜港から貨物船に乗り、カルフォルニアからヒッチハイクでたどり着くという行動力には、創立者の社会事業に対する想いが顕れています。
その後、誠信会は理念「群生和楽~すべての人々の幸福のため~」を掲げ、児童、介護、障害、地域の総合福祉事業への道を進むことになりました。
あれから60年、ふくしの里の完成をめざし大淵岩倉の開墾や創立者の急逝など〝楽しいこと苦しいこと〟多くの笑いと涙の歴史がありました。
とくに先人達の残した想いの歴史は、これからも受け継がれるべき大事だと考えます。
さて、振り返れば本年は、私にとって理事長就任15年を迎える年でもあります。
就任当初は〝誠信会とは、組織とは、経営とは〟何もわからず思い悩み、研鑽する日々を送っていたことを思い出します。
そして、前理事長長谷川和子が大切にしていた〝人づくり〟が、組織経営の要になるという考えに至りました。
また、人づくりでは、とくに『人格形成』が大切であることを学びました。
人は、正しい人格を育てることができなければ、どんなに知識や知恵を学んだとしても道を外れた行動をしてしまいます。
その結果、私たちが生活する社会での多くの問題が、人の善悪を判断する人格力が動機となって起こっています。
故に、生活環境を良くするためには〝人格〟つまり心の教育が重要になります。
思い返すと、理事長となってもっとも努めたのが、禅の〝心の修行〟心の育成でありました。
これからも研修などを通して心の育成に努めて参りたいと思います。
ところで、日本人の美意識に侘び寂び(わびさび)があります。
これは、日本の伝統的な精神文化です。
しかしながら、最近はこの様な精神的な豊かさが日本人から失われています。
そのため、他者の気持ちを察するなど、感性による微妙な気づきが苦手な人が多くなっているようです
しかし、私たちの福祉の現場では、ご利用者様に対する気遣いや思いやりのホスピタリティ精神が求められるので、心の育成はとても大事なことになります。
この心の育成には、先ず〝あるがままの自分〟を受け入れ、自己観照をすることが大事だと考えます。
人間は、救われたい!認められたい!生きたい!と煩悩を持ち、過ちから罪を犯すこともあり、人生には苦楽がともないます。
よって私たちは、多かれ少なかれ心に闇を背負って生きることになります。
しかし逆に、他者を思いやるあたたかな心の光も持っており、これが人間のあるがままの姿(本性)となります。
禅では、人間には「仏性」仏の性質があると言います、きっとこの様な心の光を言うのでしょう。
したがって、私たちは心の闇を小さくするため、欲や罪を正しく理解して減らし、心の光を大きくするため、他者を慈しみ共に悲しむ(慈悲心)などの心の輝きを増すように生きることが大切なのです。
そして次に、人間が〝独りでは生きられない弱い生き物である〟など物事の実相(真理)を知ることが大事だと考えます。
弱い生き物だからこそ、仲間や家族を求め、社会や組織をつくり、マナーやルールを定め、共に幸せであることを願いました。
『誠信会理念「群生和楽~すべての人々の幸福のため~」』私たちの幸福は、共に生きる人々も幸せでなければ成立しないのです。
「自利利他」自分の利(幸せ)と他者の利(幸せ)は同じなのです。
だから私たちは、他者を尊重(多様性の尊重)して生きることが求められます。
きっと私たちは、心を育てることによって人生を豊かにすることができるのではないでしょうか。
そしてこれが、私たち誠信会のご利用者様の心に寄り添う支援の在り方の基本的な考えであり、大切に育てなければならない心だと考えます。
これからの未来社会では、様々な問題が想定されています。
とくに、これからの日本の大きな問題として「2040年問題」‶すでに起こった未来 P.F.ドラッカー〟少子高齢化による生産年齢人口の激減が始まっています。
そのような社会情勢だからこそ今は、サスティナブル(持続可能)な社会づくりが注目されています。
そして、これらを実現していく為にも心の育成による「人の意識改革」が大きな課題であると考えます。
したがって、これからも誠信会は人づくりに努め、大きく変わる社会を担う人財を育てて参りたいと思います。
そして、この人づくりによって誠信会の精神が次世代へと継承され、先人達が残した誇りや夢が未来へと続くように歩んで参りますので、今後とも皆様方には変わらぬご厚情を賜ります様お願い申し上げます。
令和4年11月吉日 理事長 長谷川文徳
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